木のうつわに漆 大石祐子さん② 木地つくり

 

大石さんのうるしのうつわは大きく2種類あります。
塗っては拭き、薄く透明に幾重にも重ねた漆の層で木目を美しく際立たせた拭き漆と、もう一つは水分を飛ばした漆を何度か塗り研ぎ、マットな仕上がりになる木地留塗りがあります。息を入れたおおらかなうつわです。

木地加工は任性珍さんが案内して下さいました。

 


たくさんのカンナが壁にかかっている

 

まず作業場に入って驚いたのはカンナの数でした。それぞれに形の違った刃がついており、そのひとつひとつが鍛冶仕事で手作りということです。

ろくろ挽きは刃物がいのち。自分用に自分で丸棒から叩いて刃物を作っていくとのこと。大石さんと任性珍さんのカンナ棚は別々にたくさんのカンナがかかっていました。

 

丸棒からカンナを自ら作る 
(手前 重いハンマー 奥手前 丸棒から 奥後ろ カンナへ成形)

 

木地は丸太や板材を木取りして大まかな形にした後に乾燥させます。
約3か月ほどの自然乾燥、そして蔵の中で2週間ほど除湿器と暖房で徐々に乾燥を促し含水率をほとんど0%になるまで乾燥させ、のち外気にさらして空気中の水分に均質になるまで戻します。こうして木の狂いを出し切ってから成形に入ります。乾燥前に丸くくり抜いたところが乾燥後楕円になっていました。乾燥が甘いまま先へ進んでしまうと完成後に狂いが生じ歪んだり割れたりするのでとても重要な工程です。

 

粗削りした材は3か月ほど自然乾燥させる

 

蔵の中で徐々に乾燥を強める

 

乾燥させた木地をろくろで挽いていきます。拭き漆のうつわの木地加工は特に集中します。種々のカンナを取り替え、仕上げは小刀で色ムラが無くなるまで丁寧に挽き、さいごに紙やすりをサッとかけます。挽きムラがあると漆を塗った時にムラがそのまま出てしまうのでこの工程は特に気を使い、難しいようです。何度もその場で刃を研ぎながらの挽き作業です。

 

 

漆を塗り拭く前の木地の段階で、これだけの時間と手がかかり、ひとつの椀を作り上げるのにどれだけの労力がそこに注ぎ込まれているのか一部ではありますが知ることができました。
漆のうつわは木地師という独立した職人がいます。分業することで効率は上がりますが、拭き漆では自分で挽いた木地でないとうまくいかないといいます。
ほんの少しの削りの具合で仕上がりが左右してしまいます。

木地つくりも漆塗りも、何よりも木が好きでうつわが好きな大石さんにとっては切り離すことのできない一貫したひとつの流れなのだと感じました。

漆ぬりの工程はまた別の機会にご紹介します。

 

 

 

 

 

 

木のうつわに漆 大石祐子さん

 


漆の花 大石さん家裏にある漆の木

 

木漆作家の大石祐子さんのうつわに出会ったのは八重洲にある画廊でした。
芸術的にまで磨きこまれた拭きうるしの数々の作品のなかに、ひっそりと息をするように素朴な風合いで飾られていた木地留塗りの椀に目を惹かれました。
椀は柔らかく温かな印象で扱う手にも優しく、持ち帰って早速使ってみたくなるようなうつわでした。

 


高台内部 緩くカーブしているので水垢がつきにくい

 

実際に使用してみるとひとつひとつに表情があり愛着がどんどん湧いてきます。
また、水捌けの良さを考慮した高台内部の削りは家事をする者でなければわからない気付きがあり、機能的であるうえにそれを感じさせない美しさを持っています。

 

 

大石祐子さんは、同じく木漆作家の任性珍(イムソンジン)さんとご夫婦で群馬県安中市に工房世二を立ち上げ木工ろくろによる木地加工から漆塗りまでほとんどの工程を一貫して制作されています。
庭は菜園と果樹、そして鶏があちらこちらで自由に歩き回り、ほぼ自給自足に近い暮らしの印象。伺った日はさっそく庭から採取した野菜でトントントンと手際よく、お昼をご馳走になってしまいました。

 


庭で元気に歩きまわる

 

家は、養蚕農家だった古民家を少しずつ手直ししながら何年もかけて今の生活にされたそうです。大工さんでも断られるようなやっかいな修繕を仕事の合間に入れていくのは相当な労力だったのではと察します。けれどもそのひと手間ひと手間は生活に深く根ざし、地に一番近いところでしっかりと生きている力が強く伝わってきました。
そんな生活をとても楽しいとおっしゃる大石さん。
大石さんの作られるうつわに勢いがありとても身近に感じられるのは日々の生活の姿勢が深くうつわに浸透しているからではないかと思いました。

 

 

大石さんの言葉に

「私は“漆器”ではなく木の器に漆を塗っていると思っています。木のぬくもりとやさしさを残しながら、木目を生かし器として使えるように、漆を拭きうるしという塗り方で塗っています。なぜ漆を塗るかっていうとそれは水洗いして使えるように、そして木の良さを引き出してくれるから、そして何より安全な塗料だからということです。」(工房世二HPより)

 


木工ろくろによる木地加工

 

その言葉のとおり、木地つくりからとても丁寧に作業されている工程を見せていただきました。

木地つくりの工程はまた追ってご紹介します。

 

 

 

 

 

貞土窯 松尾貞一郎さん

松尾貞一郎さんの買付に伺ったとき
ちょうど絵付けをしていらっしゃる最中

今日は暑くなりそうだねと
にこやかに迎えて下さいました

 

 

1階の作業場の上の階に沢山のうつわの置かれた棚が並んでいます

とても沢山あるのに
毎回うつわが入れ替わっているのが新鮮で
いつもとはちょっと違う時間の流れのなか
ゆっくり手に取ることが出来ました

 

 

なかにとても小さなご飯茶碗
はじめてご飯を食べる小さな子用の
可愛らしいお茶碗も

一緒に連れて帰る事にしました

 

空  wan

 

 

 

 

閑古錐窯 山本英樹さん

 

佐賀県武雄にある山本英樹さんの閑古錐窯に行ってまいりました

 

 

このほどギャラリーを新設し殆ど全てを家族一同の手で作り上げた とても居心地の良い空間でした

 

 

開け放った扉からは爽やかな風が部屋を抜けていきます

 

 

少しずつ手を入れられてまだ完成には至っていないとの事ですが場の空気感がそこにあるうつわと共にとても気持ちよく、建物自身がまるで家族の一員のようにしっくりと馴染んでいます

 

 

時間の堆積は建物と人とをしっかりと繋ぎ合わせるんだなと感じました。

 

 

次回展示会用に、碗もの沢山手に取りました

 

空  wan

 

 

 

白のうつわ

 

好きな色は?と聞かれて

迷わず白と答えるようになったのは

いつ頃からだろうか

 

し3 (2)

 

以来いろいろな白にめぐりあっているが

設楽さんの白は

なかでもとりわけて好きな白だと

 

向かう電車の中で一人思いめぐらす

 

し1

 

栃木の矢板の山のなか

設楽享良さんの

うつわの買付に工房をたずねた

 

し2

 

その白は

手にしてじっくり見ればみるほど

こちらの身に

じわりと沁み入る

 

気が付けば白磁のうつわばかり

手に収めた

 

IMG_6666 (2)

 

 

 

 

陶房訪問 松尾貞一郎さん

 

佐賀県武雄市にある

松尾貞一郎さんの陶房 貞土窯へ伺いました。

 

貞土窯は

松尾貞一郎さん

松尾三希子さんのご夫婦で

それぞれにうつわを創作されています

 

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貞一郎さんのうつわを

始めて有田のうつわ屋さんで拝見したのは

一年ほど前

染付や色絵の表情が優しく

余白が美しく

うつわのかたちが活き活きとしていて

楽しい音楽が流れているような印象を

受けたのを鮮明に思いだします。

 

1

 

それから一年

我が家に持ち帰ったうつわは

楽しい表情だけでなく

壊れにくく扱いやすいうつわとして

あらゆる場で重宝しています

 

3

 

この度 松尾貞一郎さんのうつわを

新しく取扱うことになりました

 

磁器 陶器 半磁器

染付 色絵 白磁

どのうつわもそれぞれに

色々な音を発して

おおらかに伝わってきます

 

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日々の暮らしの中

愛着をもって愉しんで使えるうつわです

 

松尾貞一郎さんのプロフィールはこちら

 

 

陶房訪問 山本英樹さん

 

昨年、陶房名を「閑古錐」に変更された

山本英樹さん

 

新作やオブジェなど

新しい試みを果敢に挑まれている

山本さんの陶房へ

伺いました

 

1

 

佐賀県武雄市にある陶房「閑古錐」

ギャラリーを併設する工房も

自宅隣りへ移設し

こだわりのある建物は

家族で少しずつ手を入れながら

現在も完成へ向けて進行中です

 

2

 

幼少からこの地で暮らしている山本さん

自宅前にのぞむ湖の

朝夕 刻々と移り変わる 光のさざ波を

いつも身近に感じていたそうです

 

3

 

山本さんの感性は

この広く美しい自然の中で

育まれたものだと

改めて感じることができます

 

4

 

うつわひとつひとつに

感じられる感性の響き

手からうつわへ

うつわから手に

心地良く伝わることでしょう

 

 

 

 

陶房訪問 藤塚光男さん

 

料理を盛ったとき

その料理がいっそう引き立つ

うつわ

 

1

 

盛られる料理の存在あっての

うつわ

 

そんなお話しをあれこれと

 

藤塚光男さんの窯元へ伺いました

 

2

 

藤塚さんは京都府亀岡で作陶されています。

ご自宅の2階部分は

たくさんのうつわ見本が整然と並べられ

それらのうつわを手に取り確かめながらの

買付け訪問となりました

 

3作業場

お弟子さんの姿もみられる別棟にある作業場

 

4作業場2

 

5電気窯

焼成後のうつわのはいっている電気窯。温度の下がるのを待つ

 

6庭

庭では山野草木が冬の季節を知らせる

 

自然体で和やかに

いつも笑顔で迎えて下さいます

藤塚さんの描かれる絵付けに

お人柄がそのまま表れているのを観ると

こちらもやわらかな気持ちになります