ちいさな手

 

 

小さなこどもの

初めて目にしたり

触れたりすることは

どれだけちいさな頭の中の

刺激になっていることでしょう

 

出来るだけ良質のものに

普段から触れさせてあげることによって

感覚や判断力が自然と身につくような気がします

 

小さなころから

大切なものを大切にあつかうということだって

とても必要なこと

 

漆椀は

軽くて

壊れにくく

熱くなりにくい

 

使っているうちに艶も出てきて

表情も変わっていきます

 

漆は扱いにくいと思っているのは

超高級品だけ

普段使いの漆器は

暮らしに根付いたとても使いやすい

日用のうつわなのです

 

子供椀(水目桜) 大石祐子作
口径10.7㎝ 高さ6㎝

 

子供用に誂えてもらいました

高台が低いので安定しています

 

 

木のうつわに漆 大石祐子さん② 木地つくり

 

大石さんのうるしのうつわは大きく2種類あります。
塗っては拭き、薄く透明に幾重にも重ねた漆の層で木目を美しく際立たせた拭き漆と、もう一つは水分を飛ばした漆を何度か塗り研ぎ、マットな仕上がりになる木地留塗りがあります。息を入れたおおらかなうつわです。

木地加工は任性珍さんが案内して下さいました。

 


たくさんのカンナが壁にかかっている

 

まず作業場に入って驚いたのはカンナの数でした。それぞれに形の違った刃がついており、そのひとつひとつが鍛冶仕事で手作りということです。

ろくろ挽きは刃物がいのち。自分用に自分で丸棒から叩いて刃物を作っていくとのこと。大石さんと任性珍さんのカンナ棚は別々にたくさんのカンナがかかっていました。

 

丸棒からカンナを自ら作る 
(手前 重いハンマー 奥手前 丸棒から 奥後ろ カンナへ成形)

 

木地は丸太や板材を木取りして大まかな形にした後に乾燥させます。
約3か月ほどの自然乾燥、そして蔵の中で2週間ほど除湿器と暖房で徐々に乾燥を促し含水率をほとんど0%になるまで乾燥させ、のち外気にさらして空気中の水分に均質になるまで戻します。こうして木の狂いを出し切ってから成形に入ります。乾燥前に丸くくり抜いたところが乾燥後楕円になっていました。乾燥が甘いまま先へ進んでしまうと完成後に狂いが生じ歪んだり割れたりするのでとても重要な工程です。

 

粗削りした材は3か月ほど自然乾燥させる

 

蔵の中で徐々に乾燥を強める

 

乾燥させた木地をろくろで挽いていきます。拭き漆のうつわの木地加工は特に集中します。種々のカンナを取り替え、仕上げは小刀で色ムラが無くなるまで丁寧に挽き、さいごに紙やすりをサッとかけます。挽きムラがあると漆を塗った時にムラがそのまま出てしまうのでこの工程は特に気を使い、難しいようです。何度もその場で刃を研ぎながらの挽き作業です。

 

 

漆を塗り拭く前の木地の段階で、これだけの時間と手がかかり、ひとつの椀を作り上げるのにどれだけの労力がそこに注ぎ込まれているのか一部ではありますが知ることができました。
漆のうつわは木地師という独立した職人がいます。分業することで効率は上がりますが、拭き漆では自分で挽いた木地でないとうまくいかないといいます。
ほんの少しの削りの具合で仕上がりが左右してしまいます。

木地つくりも漆塗りも、何よりも木が好きでうつわが好きな大石さんにとっては切り離すことのできない一貫したひとつの流れなのだと感じました。

漆ぬりの工程はまた別の機会にご紹介します。

 

 

 

 

 

 

木のうつわに漆 大石祐子さん

 


漆の花 大石さん家裏にある漆の木

 

木漆作家の大石祐子さんのうつわに出会ったのは八重洲にある画廊でした。
芸術的にまで磨きこまれた拭きうるしの数々の作品のなかに、ひっそりと息をするように素朴な風合いで飾られていた木地留塗りの椀に目を惹かれました。
椀は柔らかく温かな印象で扱う手にも優しく、持ち帰って早速使ってみたくなるようなうつわでした。

 


高台内部 緩くカーブしているので水垢がつきにくい

 

実際に使用してみるとひとつひとつに表情があり愛着がどんどん湧いてきます。
また、水捌けの良さを考慮した高台内部の削りは家事をする者でなければわからない気付きがあり、機能的であるうえにそれを感じさせない美しさを持っています。

 

 

大石祐子さんは、同じく木漆作家の任性珍(イムソンジン)さんとご夫婦で群馬県安中市に工房世二を立ち上げ木工ろくろによる木地加工から漆塗りまでほとんどの工程を一貫して制作されています。
庭は菜園と果樹、そして鶏があちらこちらで自由に歩き回り、ほぼ自給自足に近い暮らしの印象。伺った日はさっそく庭から採取した野菜でトントントンと手際よく、お昼をご馳走になってしまいました。

 


庭で元気に歩きまわる

 

家は、養蚕農家だった古民家を少しずつ手直ししながら何年もかけて今の生活にされたそうです。大工さんでも断られるようなやっかいな修繕を仕事の合間に入れていくのは相当な労力だったのではと察します。けれどもそのひと手間ひと手間は生活に深く根ざし、地に一番近いところでしっかりと生きている力が強く伝わってきました。
そんな生活をとても楽しいとおっしゃる大石さん。
大石さんの作られるうつわに勢いがありとても身近に感じられるのは日々の生活の姿勢が深くうつわに浸透しているからではないかと思いました。

 

 

大石さんの言葉に

「私は“漆器”ではなく木の器に漆を塗っていると思っています。木のぬくもりとやさしさを残しながら、木目を生かし器として使えるように、漆を拭きうるしという塗り方で塗っています。なぜ漆を塗るかっていうとそれは水洗いして使えるように、そして木の良さを引き出してくれるから、そして何より安全な塗料だからということです。」(工房世二HPより)

 


木工ろくろによる木地加工

 

その言葉のとおり、木地つくりからとても丁寧に作業されている工程を見せていただきました。

木地つくりの工程はまた追ってご紹介します。